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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter89 『Friend』 89-47


(千波が海が苦手だと聞いた事があったが、それでも、様子を見に来たかったのは、
自分と同じ気持ちではないかと菖蒲は思った。)

「・・嬉しい・・。」

「誰かを好きになるとね。

明日が楽しみになるの。

どんなことをしようか。 どんなところへ行こうか。

どんな美味しいものを食べようか。

もっと、もっと。」

「一緒にいられる明日が、楽しみになるの。

もっとずっと、一緒にいたいって。 思うでしょう?」

(千波は、傍らに立つ、菖蒲を見上げながら。 楽しげに両手を頬について。
前方の海岸線を見た。)

「・・千波様。 そうですね。」

(菖蒲は感慨深く頷いた。)

「いつどうなってもいいって、夏樹はどこかで思ってた。

誰かと会っても、本当のことは話せないし。 だれも、夏樹のことを知らないから。

それに、他の人に。 望まれてないって思ってる。」

「そんなことは・・!」

「あの子は、そういう子。 いつも自分のことは後回しなの。」



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