HOMENovel
Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter9 『行くぞ』 9-9
関わってしまった人々の、辛い記憶は消してあげたいけれど、
大切な記憶は消したくないから・・力を使わないで欲しいなんて。」
「僕は、出来もしない事を願っているんだろうか?」
「夏樹様・・。」
(菖蒲は、ミラー越しに、少し青白い夏樹の顔色を見て
励ますように、言葉をかけた。)
「そうですね・・、橘さんを止める事は、難しいですが・・。
きっと、“闇”の被害から、人々を守る事は、出来るはずです。
そのために、メンバーの皆さんや、夏樹様の力があるんですよ。」
「誰かを守るために、この街の人たちを守れるように。」
「夏樹様には、力があるのではないでしょうか?」
「私は、そう思います。」
(菖蒲は、微笑んだ。)
(夏樹は、少し驚いてから、穏やかに笑みを浮かべた。)
『いつも、普通の生活をしてみたいと、どこかで思っていた。』
『住み慣れた屋敷や、メンバーとの暮らしが、嫌なわけじゃない。』
『ただ・・。』
『こうやって、街行く人々の中で、自分も暮らしてみたかった。』
『それは、聖と暮らすと決めたことで、捨てたはずの望みだったんだ。』
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』