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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter90 『恋心』 90-10


(長身の善の隣に、良く似た顔立ちの、黒髪の少女が顔を出した。)

「わたしもっ! 蒲公英ちゃんと遊びたいって、思ってたの♪」

「うふふっ。 あとでねっ。 風見神社で会いましょう。」

「くすすすっ。」

(理恵は、善の腕にしなやかに手を回しながら。 ツインテールの黒髪をなびかせ、
楽しげに微笑み、善を連れて教室を出て行った。)

「あいつら・・っ。 ぜって〜、あやしいっ!」

「いいかっ、たんぽぽっ!」

(数馬は蒲公英に振り向き。 思い切り強く。 小さなその手を握った。)

「祭りに行ったら、ぜって〜にっ!」

「オレの手を、はなすなよっ。」

(蒲公英は、数馬の真剣な表情を見上げ。 力を込めて握られた、
数馬の手を見た。)

「うん///」

***

(夕暮れが近づき。 まだグラウンドには昼間の熱を帯びた暑さが残り。
陸上のスタートラインにつく、駆の日焼けした長い手足に。 光る汗を
浮かばせた。 足を慣らしたあと、合図のホイッスルと同時に。)

(風を切って、走り出す。)

ピーッ



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