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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-1


「さて。 出来た。」

「見てごらんなさい。 良く似合ってる。」

「このくらい、飾らないとね。」

(化粧台の大きな鏡の前で、桜は。 少し緊張した面持ちの、紫苑の頬のすぐそばで、
にっこりと微笑み。 新しく仕立て、袖を通したばかりの。 桜柄の浴衣がどう映るか。
一緒に覗き込んだ。)

「///・・、少し。 派手じゃないかな・・?」

(きらきらと輝く、桜型の花かんざしが。 可愛らしく結われたベージュ色の髪に光って、
紫苑は瞬いた。)

「大丈夫よ。」

「ミイちゃんとピュアちゃんの方が、もっときらきらよっ?」

「紫苑〜。 自信を持ちなさい。」

(桜は浮かない紫苑の頬に、自身の頬をよせ。 照れる紫苑に頬ずりした。)

「あなたは可愛いわっ。 ほんとに本当に可愛いわっ。」

「ママの自慢よ。 紫苑。」

「ママもね。 パパと初めて出かけたのが夏祭りだったの。」

(桜はそう言うと、箪笥の前に戻り。 用意していた別の浴衣を取り出した。)

「一緒に歩けるだけで、嬉しかったわ。」

「ふふっ。」

「・・ママ・・。」



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