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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-2


「行ってくれるわよ。」

(不安げな様子の紫苑に、桜は笑顔を向けた。)

「・・ううん。」

(だが、紫苑はなぜか、首を振った。)

「お仕事が遅くなっても、今夜中には帰ってくるわよ。」

「ううん・・っ。」

(紫苑の目には、わずかに涙が浮かんでいた。)

「・・紫苑?」

『きっと、望んだらだめなの・・。』

『一緒に居たいって、思ったらだめなの・・っ。』

「どうしたの?」

(紫苑は両手で口元を覆い。 うまく伝えることの出来ない気持ちを抑えた。)

『そう思うたび、あの怖い人が。 近づいて来る・・。』

『でも・・///』

「良いのよ。」

(桜は、紫苑の明るい茶色の瞳を見つめ、頷いた。 紫苑は何か、言葉にできないものと
葛藤している様だった。)

「心に正直にいなさい。」



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