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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-12


***

ズルッ ズルズルッ・・

(黒く流れ出た闇は、行き場を失い。 四角く閉ざされた異空間の片隅に追い詰められ、
黒い飛沫を上げ。 小刻みに震え。 血走る瞳で、夏樹を見上げた。)

【グオォォォーッ・・】

「はぁっ。 はぁっ・・。」

ガッ・・

【ギャァァァァーッ】

(夏樹は白い左手で、闇の胸元から。 巨大な“時の欠片”をえぐり出した。)

(小さな時の欠片から生み出された闇と違い。 その欠片を取り出す為には、
闇を、立ちあがることが出来ない程に。 打ちのめさなければならなかった。)

「・・・っ。」

(風は、いつも通り。 夏樹に味方したが。 残虐とも思える、惨劇の跡は。
破壊された住宅街の、砕け落ちた屋根瓦。 ブロック塀の残骸、窓ガラスの破片となり。
夏樹の視界に積み重なり。 黒く辺りに流れ出る、闇の飛沫は。 ぼたぼたと、
白い頬を黒く染め。 その返り血は、まるで電流の様に、夏樹の肌をしびれさせた。)

『・・同じじゃないか・・。』

『あの、気配の主が言うように・・。』

『僕が闇を呼び起こし・・。 いたずらに、傷つけているだけじゃないか・・?』

「・・・。」

(閉ざされた空間の中で。 閉じ込め。 辺りに流れ出さないように自らが施したその



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