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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-13


閉鎖結界は。 風を、闇と夏樹を。 外部から強力に遮断し。 ことさらに、
夏樹の心を、孤独で満たした。)

『普通の人たちと・・。 関われば、関わる程・・。 戦闘は困難で。』

『闇に触れた自分と、風を。』

『こうしてしばらく閉じ込めておくことしか。 今のところ、

次の闇化を遅らせる方法はない。』

(欠片を失った、黒い闇の流れは。 次第に、透き通り。 透明な、雫となって。
辺りに流れ、夏樹のシャツに滴る黒く纏わりつく粘土質の液体も。 透明な水分となり、
白い腕を伝わり、指先から流れ落ちた。)

(それでも、夏樹の心は晴れず。 閉じられた、ガラスの様な四角い結界の壁の中で。
見上げる暮れかけた空は遠く。)

(たとえ街へ出て。 どれほど普通の人に近づいたとしても、
自分のいる場所は、創られた街の景色の異空間の中に過ぎない。)

(そのことを、まざまざと感じずにはいられなかった。)

「・・ふぅ・・。」

(深い紺色の瞳が、重たく。 目を細め。
手の中に、輝く“時の欠片”を見つめた。)

「それでも、僕は。」

トッ パリンッ カサ・・

(足音と気配に、夏樹は驚き。 振り返った。)

「はっ・・。」



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