HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-22


「あら、夏樹くんが。 闇を引き起こしているんだって、

心配でたまらないって。」

「言ったのは、あなたじゃない?」

(静乃は、両脇に立ち並ぶ。 黒い木目の古い街並みに、視線を注ぎながら。
少しずつ、増え始める屋台に明かりが灯り。 湯気と良い香り。 それに、通りの奥から
聞こえてくる、小さな祭りばやしに目を細め。 微笑んだ。)

[「確かに・・。 そう言いましたがっ。 彩様のデータを盗むなんて・・っ。」]

[「研究所は、今では聖様の管理下。 聖様の保管されている、大事なデータでは

ありませんか?」]

[「もし・・、何かあったら・・。」]

[「私は・・っ。」]

(静乃は、手にした通信機の声に、耳を傾け。 通りの先、古い樹木の木陰の下。
立っているその人物を見つけ。 人垣を抜け。 その人が立っている。
少し静かな一角を目指し、歩いて行った。)

「ここでは、その話しは無しよ。 外の世界では、誰が聞いているか。」

「まぁ、菖蒲くん。」

「白色・・。 初めて見た。」

(言い返そうとした菖蒲は。 耳元と、同時にすぐそばで聞こえたその声に、
はっとし。 振り返った。)

「! 静乃さん・・。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ