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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-26


(紺色の袖から覗く白い腕には、黒い腕時計。 それはFOTから連絡を受けるための
ものであり。 それをしている間。 夏樹が闇から解放されていないことを、
紫苑はわかっていたが。)

(それでも、そばに来て、振り向いたその横顔に。 紫苑の想いは込み上げた。)

「夏樹くん・・っ!///」

(冷やりとする空気を纏い。 夏樹は、穏やかな視線で、紫苑に振り向いた。)

(だが、青く透き通るその肌に。 夜空の様に光る深い紺色の瞳は、色濃く。)

(どこか近づいてはいけない様な、緊張感と。 怖さを、まだはらんでいた。)

「ごめんね。 約束を、忘れていたわけじゃないんだけど・・。」

「大きな闇に出会ったから。 少しみんなと離れていたかった。」

「そしたら。 何してるんだって、しかられたよ。」

(夏樹は笑っていたが。 どこか、気持ち的にも。 体調的にも。 つらそうに見えた。)

“闇から・・離れようとするからだ・・。”

“お前の本質は・・そこにあるのに・・なぁ。”

(紫苑の耳元で、少年の声が聞こえた。)

「・・っ。」

(紫苑は身震いし。 思わず片手で、耳元に触れた。)

“素直に・・闇に染まればいい・・。”

“そうすれば・・、楽になれる・・。”



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