HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-28
「うん!///」
「・・これ。 家に帰ったら、桜さんにつかまって。」
「着せられた。 菖蒲も、近くに来てるよ。」
(夏樹は袖を広げて見せながら、笑った。)
「うん。」
(紫苑は頷きながら、夏樹がsnow dropのことを、“家”と言ったことに気づいた。)
「こういうの初めてだよ。 光さんたちもいるから。 なんとかなる。」
「行こう。」
(白い肌の大きな手が、紫苑に差し出された。 紫苑はその光景に、感動しながら、
夏樹の手を取った。 雪の様な冷たさが、腕に伝わる。)
「きれいだね。 紫苑さん。」
(紺色の瞳が、目を細めて笑った。)
「///!」
(紫苑の胸は、早鐘の様に高鳴った。 深い紺色の瞳の先で、ピンクの桜柄に包まれる、
紫苑の浴衣の裾が。 美しく揺れ。 可愛らしく結われた髪に刺さる桜のかんざしが、
きらきらと、門前通りの明かりに煌めいていた。)
『夏樹くん・・。』
『お願い・・。』
『このままで。 このままで。 いさせて。』
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』