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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-29
(冷たい体温と、握りしめる手の力が。 紫苑の心を幸せで満たし、同時に
締めつける様だった。)
チリリッ
“トクンッ”
“トクンッ”
(手を引いてゆく、夏樹の。 紺色の襟元に、銀の小さな鎖が光って見えた。)
(それが、不思議と、紫苑の心を捕らえていた。)
“指輪だ・・王家の指輪・・。”
“鍵の・・手がかりを・・探せ・・。”
(紫苑の大きな茶色の瞳に。 黒い光が揺れた。 辺りを照らす、提灯の明かり。
揺らめく夜の闇に。 手を引き、前を行く夏樹には、気づくことができなかった。)
***
(鳥居の奥。 祭りのメイン会場近く、屋台の賑わう石造りの通りに。
皆が集合していた。 やって来た紫苑と夏樹。 菖蒲と静乃を迎え、皆は感嘆の声を
あげた。)
「うおっ、お前ら・・ずるいだろ、それ。」
「あ〜、あれだ。 別にうらやましいわけじゃないけどっ。」
(ソラは、菖蒲を見たあと、まじまじと夏樹を見た。 通りかかる女の子たちは、
皆振り返って、その一団を見ていた。 半分は、ソラの鮮やかな水色の髪を見て。
指さしていたが、ソラは気づいていないようだった。)
「くっくっ。 何言ってるの。」
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