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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-32


「くすくすっ。 少し見て回りましょう。」

「大丈夫よ。 夏樹くん。」

(周囲の様子が気にかかる夏樹を、静乃が笑顔で後押しした。)

(夏樹は、少し心配そうに目を細めながら。 自分が、周りに影響を与えていないか。
周囲の賑わう。 笑顔の街の人々に視線を向けていた。)

「菖蒲くんを、借りてもいいかしら?」

(照れて、やや目を伏しながら立つ。 長身の菖蒲の向こうから、
静乃が夏樹の様子をうかがった。)

「いえ・・/// 夏樹様・・、私は。」

『!』

「・・どうぞ。」

(瞬く夏樹を見て、今度は、隣の紫苑に声をかけた。)

「春日さん。 そういうわけだから。 楽しんでね。」

(少し戸惑った様子で、なぜか元気のない紫苑に。 静乃は笑顔を向けた。)

「・・・はい。」

(紫苑は頬を赤らめ、静かに頷いた。)

トクンッ トクンッ

(けれど。 冷やりとする夏樹の傍に立っているだけで、伝わってくる。
恐ろしい気配は。 紫苑の心を不思議に震わせ。 胸騒ぎがした。)



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