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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-40


(蒲公英は、数馬の手を引くと。 鳥居をくぐり。 軽やかな下駄の音を響かせ。
桜に行先を告げた。)

「ママーっ、たんぽぽっ。 数馬くんと金魚さんすくうっ。」

「くすくすっ、はいはい。」

(桜は微笑み、後に続いた。)

「数馬くんっ、お祭りはじめて?」

「・・オレ? んと。」

「もっとちっこいころ・・。 1回だけ、行ったことあるよ。」

(蒲公英に尋ねられ、数馬は答えながら。 そっと、お気に入りの帽子を、
被り直した。)

***

“気に入らね〜・・なぁ。 気に入らね〜・・。”

“あいつの・・笑顔が・・。”

“引きつるところを・・見てみたい。 ・・なぁ?”

「遊びでもね。」

「こんなんじゃ・・。 楽しくありませんよ。」

(黒い服を着た。 黒髪の少年が。 賑わう門前通りを、遠くから見つめていた。)

(行き交う人々の流れと。 違う時間の流れに、その人は居る様で。
まるで、取り残されたその場所に。 たたずみ。 ただ一点を、見つめているようだった。)

「くっくっくっ。 丁度良い・・。 見つけました。」



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