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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-41


「なぁに? 善。 うふふっ。」

(善の傍で、長い黒髪をツインテールに。 大輪の花々にリボンを乗せ。
赤い蝶が際立つ、黒い浴衣に身を包む。 可愛らしい小さな少女が立っていた。)

「不機嫌な僕の前に・・。」

「姿を見せるなんて・・。」

「馬鹿な人ですね。」

(黒い瞳は、底知れぬ冷たさで。 鳥居の前を見つめた。)

「こんな世界、僕が直に。」

「壊してあげますよ。」

(光の無い、その瞳は。 どこを見るでもなく、大きく見開かれ。
彷徨い移ろう焦点は。 鳥居の向こうで笑う蒲公英と数馬を捉え。)

(まるでスポットライトの下の様に。 人混みの中でも消えない、
夏樹の気配に。 憎悪をむき出した。)

***

(人混みにはぐれぬ様、夏樹の差し出した白い手は。
触れる指先から、手を繋ぐ紫苑の半身を。 冷たく冷やすようだったが。)

(握る手の感覚と、見慣れぬ浴衣姿の横顔を。 見上げる紫苑の心を、
幸せが包み込み。 その分、闇の魔術は、次第に紫苑の心に浸透した。)

ジジッ・・

シュボッ



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