HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-42


(善の視線の先には、もう一人の人物がいた。 闇にまぎれて現れたその人物の、
細いつり目の瞳を。 短い赤い髪を。 賑やかな家族連れや、行き交う子どもたちが、
思わず身を引く様な。 恐ろしい風貌を持つ、黒いスーツ姿の男性の顔を。)

(手にした煙草に点すライターの炎が、ちりちりと浮かび上がらせ。)

(美味そうに、男性は、煙を吐いた。)

「ふぅ〜・・。」

「あのガキが・・、追いかけてるのはあいつかね〜。」

「それとも、俺かね。」

カチッ

(男性は、ライターとともに、ズボンのポケットから取り出したメモリーを
胸ポケットにしまい込んだ。)

「まー、あいつのことは。 追いかける必要もねーか。」

「ひっひっひっ。」

「夏樹。 どうせおめーは。」

「もう逃げられねー籠の中よ。」







『籠の中の世界(黒)』
Chapter91 End

Fragment of Time・・・時の欠片の道しるべ



『 Chapter92へ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ