HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter91 『籠の中の世界(黒)』 91-9
浮かび上がって見えた。 遠くから、小さく。 祭りばやしがソラの耳にも届き。
ソラの心は躍った。)
(仄暗い、桜並木の下を下りながら。 ソラは改めて、少し前を女の子たちとともに歩く、
ミイを見た。)
『夏祭り・・か。 くすくすっ、なんだか。』
『賑やかになったな。』
『オレンジ色の花の浴衣。 ミイに似合ってる。』
『そうだ・・、花祭りの時も。 そんなでっかい。 花の飾り。
頭につけてなかったか?』
(三輪の大きな花が開いた花かんざしは、ミイのオレンジ色の短い髪の上で、小さな
ミイの顔と同じくらいの大きさに見え。 笑顔のミイは可愛かった。)
「よく見ると、豪華だよなぁ〜。」
(駆はしみじみと、前方を行く。 女子面々をうっとりと眺めた。)
「だよな。 こんなかっこで来るんじゃなかった。」
(ソラは夏の熱気に、少しずつ汗ばみはじめた。 着ているTシャツを片手で
あおぎながら。 一人ビシッと決まっている、仙崎の肩に手をやり。 腰に差している、
うちわを奪い取ると。 ぱたぱたとあおぎはじめた。)
「ふぅ、あっち〜。」
「先輩・・。 一緒に来たってことは。」
「知ってるんでしょうね?」
(意味深に見つめる水色の瞳に。 仙崎は、冷やかに振り向いた。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』