HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-13
(ソラは嬉しそうに笑い、ミイの手を取った。)
「来いって。 見つけたんだ。 こないだの。」
(水色の瞳はビー玉の様に光り。 強く、ミイの手を引いた。)
「きゃぁっ、どこ行くのよっ! 待って。」
(走り出すソラに引かれ、ミイは慣れない足元で。 下駄の音を、響かせながら、
本通りから少し外れた、横道の露店へ。 夜も深まり、さらに賑わいを増す。
人であふれる細道を、進んで行った。)
カラン コロンッ
(細くなった通りは、向こうからもこちらからも押し合う人であふれ。
背の小さなミイは、今にも押しつぶされそうだった。 可愛らしい小さな巾着が、
時折、すれ違う人に引っ掛かりながら。 ミイはそんな中を、人混みを押し分け、
走って行くソラの鮮やかな水色の髪を。 背中を見つめた。)
「早く行かないとっ。 みんなのところに、
戻らないといけないからなっ!」
(ソラは、走りながら。 ミイの方へ振り返った。)
『あ・・っ。』
(ミイは、不思議な感覚を覚えた。)
カラン・・コロン・・ッ
タッタッ・・タッタッ・・
(ゆっくりと、ミイの。 オレンジ色の短い髪が揺れ。 小さな頬にかかる。
夏の暑さと、走ってゆくソラの。 つかむ手の強さが。 ミイを、忘れていた記憶の
向こうへ。 連れて行った。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』