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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-34


(紫苑の回した腕の先には、夏樹の首元に。
紺色の浴衣から覗く、細い、銀の鎖が見えていた。)

『銀の指輪・・。 鍵は・・どこ・・?』

トクンッ トクンッ

トサッ

(夏樹は、紫苑を近くのベンチに下ろした。)

(少し離れた、屋台の前に。 皆もいて、佐織が戻って来るのを待っていた。)

「少しここで待とう。 菖蒲に、迎えに来てもらうから。」

「みんなは、まだ残るかもしれないな。」

『どうしたら・・、想わないでいられるの・・?』

『夏樹くんに、触れるたび。 あの人の声が・・、聞こえてくる。』

(紫苑は気を逸らそうと、話しかけた。)

「夏樹くんは、お祭りに来たの。 初めてって、

言ってたよね。」

「子供のころ・・///とかは? 遊びに行ったりとかしなかった。///」

(夏樹は、少し考えてから。 頷いた。)

「たぶん。 よく、覚えてないんだ。 楽しい思い出ばかりじゃなかったからだって。

思う。」

「居場所が無くて。 FOTにいるようなものだからね。」



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