HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-37


(そう言って、微笑んだ夏樹の顔を。 賑やかな通りから、少し離れた、木々に灯る
提灯の明かりが。 温かく照らした。)

「・・・っ///」

(気が付くと、紫苑は静かに涙していた。)

「ごめん。 僕のほうこそ、なんでこんな話。」

(夏樹は優しく微笑み、ベンチを立ちあがった。)

「あ、あれ。 りんご飴だ。 ひとつ買ってこよう。」

(夏樹が笑顔でいることが、よけいに。 紫苑の心を締めつけた。
夏樹は、紫苑に心を許して、話してくれたのだ。)

『・・夏樹くん・・っ。』

(提灯の明かりが、ゆらゆらと揺れ。 辺りは、いつの間にか。
普段とは違う、景色の中へ。 紫苑を連れていくようだった。)

(明かりに照らされる、門前通り。)

(赤い鳥居の前を通り過ぎた一人の男性が。
その様子を見て笑い、夏樹の立ち止まった先へ。 ゆっくりと、近づいた。)

「すみません。」

「りんご飴を1つくださ・・。」

ドンッ・・!

ガタガタガタッ ガッ

「美味そうだな〜。 ひっひっひっ。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ