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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-42


(自分の背後に、ぴったりと張り付く。 小さな少年の気配を感じながら、
狐次郎は。 わずかに背中へ振り向いた。)

ズッ・・

「(ごほっ・・)」

「今、俺の姿が見えるのは、お前だけだ・・。」

「お前は俺と、契約したからなぁ・・。 望み通りにしてやるよ。」

(少年は、狐次郎の耳元で囁いた。)

ググッ・・

「・・うっ。」

「欠片をよこさないならば・・、約束通り・・。 命をよこせ・・。」

(鋭い氷から生み出された刃を、善はゆっくりと。 深く、背中に刺し込んだ。)

(善の手は赤い血に染まり。 十分な手ごたえを感じる深さで、思い切り。
刃を引き抜いた。)

ズバッ・・!

「(かはっ・・!)」

ドサッ

(狐次郎の身体は倒れ。 背中から流れ出た血は、みるみる地面に広がった。)

(飛び散った小さな血痕が。 夏樹の白い肌を、赤く染め。
深い紺色の瞳は、恐怖に見開いた。)



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