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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-45


「お前に、教えてもらわなくても。 わかっているよ。」

「初めて会った時から。 ずっと、感じてた。」

「誰かを、亡くしたから。 僕を、そんな風に追いかけているのか?」

(夏樹の創り出した結界の中で、フェルゼンは、元の姿を取り戻していた。
それは、幻の様に透明で、目に見えなかったが。 夏樹と風が、逃がさぬように
その場に取り押さえていた。)

【・・何だと・・?】

「可哀相な人だ。」

【貴様にっ、何がわかるっ!】

【お前自身の国と・・、この俺の国さえ滅ぼした貴様に・・!】

【俺の苦しみの・・、何がわかる・・っ!】

【お前の・・命では足りない・・。 もっと、俺を楽しませろ・・!】

「狐次郎は、死んだりしない。」

「誰も、死なせない。」

(赤い瞳は、怒りに燃え。 深い、紺色の瞳を睨んだ。)

ビシュッ・・ ビシュビシュビシュッ・・

【ガァァァァーッ】

(無数に浮かび上がる魔法陣の中から、フェルゼンが閉じ込めて置いた
闇達が姿を現し。 結界の壁の四方から飛び出し。 祭りの人混みで賑わう、
門前通りの中へ、散って行った。)



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