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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-56


バキッ・・ ズルズルッ

【ガァァァァーッ!】

「また、来よった・・。 しつこい奴らじゃ。 今宵は祭りじゃ。」

「神聖な場所に。」

ボボッ・・

(ちりちりと、燃えはじめた炎は。 艶の指先から、美しく舞い踊り。
黒く、大きな瞳を照らし。 艶めく、黒い真っ直ぐな髪を熱く、舞い上がらせた。)

「ぬしら、現れるでないわっ!」

ゴォォォーッ!

(小さな艶の身体は赤く燃え。 向かい来る黒い闇を弾き飛ばしながら、
辺りの、夜の闇さえも消えかける程に。 強く、門前通りを、赤く照らし出した。)

***

「息は、あるか?」

「ったく、手間かけさせやがって。」

(光は、かろうじて閉ざした結界の中に。 倒れこんでいるその人物を、
迷惑そうな瞳で、冷やかに見た。)

「ひどい出血ね・・、早く。 彩さんに診せないと。」

(葵は、倒れたその人物の背中に。 大きな傷口の上に、手をかざした。)

「そいつをかばえば、こっちが馬鹿をみる。」



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