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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-58
「みんな、どこにいるのっ?」
(紫苑は、足の痛みを忘れ。 爪先立って、あたりを見回した。
賑やかな、門前通りの様子は、変わらず。 祭りばやしと、
小さな子どもたちの笑い声。 行き過ぎる人々の、楽しい時間が。
まるで、紫苑だけを取り残し、通り過ぎて行くかの様だ。)
「何か、変・・。」
「さっきまで、そこに。
夏樹くんがいたのに・・。」
(紫苑は、嫌な予感に包まれていた。 どこかで、切り取られたこの場所と。
同じ景色の中で。 夏樹やみんなが、苦しんでいるのではないか。)
(あの時見た闇が、また。 鏡の様に、映し出した異空間の向こうで、
皆を捕らえているような気がして、ならなかった。)
(行き過ぎる足音。 声に、紫苑は耳を澄ませた。)
「ねぇねぇ、さっきの見た?」
「うん。 すごく、本物の怪物みたいだったね。 すぐに消えちゃったけど。」
(近くを行く女の子たちが、楽しげに通り過ぎた。)
「リアルなお化け屋敷ね。」
(紫苑は、桜のかんざしを揺らしながら、必死な思いで、走り出した。)
カランッ コロンッ
「はっ・・はっ。」
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