HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-61
コオッ・・
コオッ・・ ビシュッ・・ビシュビシュビシュ・・!
(菖蒲が、手を伸ばすと。 その手は、不思議と、何もなかったはずのその場所から。
景色の向こうへ、引きこまれる様だった。)
「菖蒲くんっ!」
ゴオッ・・ ゴォォォーッ
(壁の向こうには、激しい気流の流れがあり。 それは、夏樹が呼びだしている
風だった。)
「風が・・。」
(自分と、風に引き寄せられる闇の特性をつかい。 夏樹は、周囲に溢れ出た闇を、
自らに引き寄せていた。)
『夏樹様・・っ。 風を使って、闇を呼び寄せている。』
『早く、こっちへ。』
(菖蒲は、自身も空間へ引き込まれぬよう。 空間の狭間で、身体を支えながら、
できるかぎり、手を伸ばした。)
「くっ。」
ゴワワワワーッ
「夏樹くんっ!///」
(開かれた、わずかな隙間から。 紫苑の目に、夏樹のいる。 異空間の景色が、
見えた。)
“見ろ・・。”
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