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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-62


“よく見ろ・・。 この、壁の向こうが・・。”

“あいつの世界だ・・。”

“汚らしい・・。 汚らわしい・・。”

“おぞましい・・、闇と・・あいつは居る・・。”

“壊された世界・・、それが・・。 あいつの居場所だ・・。”

“なぁ・・、闇と血に汚れたあいつを・・。”

“お前は・・愛せるのか・・?”

(恐ろしい声が、再び、紫苑の耳に響いた。)

(見開いた、紫苑の瞳の前に。 黒い闇をまとう、夏樹が姿を現した。)

ゴオッ・・!

『・・・!』

(周囲を流れゆく、黒い闇の体液が夏樹を覆い。
そばに光る紺色の瞳は、恐ろしい力を宿している様に見える。 真っ白い肌には、
赤い血痕が残る。 強い力を放つ瞳が。 舞い上がる風を集め。 集う闇を、
振り絞る力で、すべて打ち壊した。)

ドオーンッ!

パラパラパラッ・・

「夏樹っ! 無茶だっ!」

(ソラが追いついたとき、闇は四散していた。 同時に夏樹の身体は、風を解放し。
伸ばされた白い腕は、ゆっくりと力をなくした。)



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