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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-63


「くそっ。」

(四散した闇は、透明な雫となって。 辺りに輝く水滴を飛ばした。 いくつも
時の欠片が舞い落ち。 その時やっと、
菖蒲の伸ばした手が。 夏樹を掴んだ。)

ズズッ

「・・夏樹様っ・・。」

(異空間から引き戻され、夏樹の創り出した。 もう一つの風見神社門前通りは、
夏樹の背後で、静かに。 閉じられていった。)

キィィーッ ガシャンッ・・

「菖蒲・・。」

(閉じて行く扉の向こうで。 紫苑の目には、壁の向こうに存在した。
破壊されつくした。 異空間の門前通りの景色が、焼きついていた。)

・・ドサッ

(闇が消えたと同時に。 強く引かれた菖蒲の腕の中で、夏樹は倒れた。)

「夏樹くんっ!」

(静乃は、通信機で連絡を取りながら。 素早く周囲に視線を走らせた。)

「先生。 夏樹は大丈夫ですか? 先生・・!」

「天野くん。 みんなをお願い。 菖蒲くん、夏樹くんから目を離さないで。」

「緊急に、空間通路を結合します。」

「・・。 夏樹くん・・。」



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