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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter92 『籠の中の世界(赤)』 92-9


(チイと春人は、少し離れた。 屋台の通りの向こうから、皆の様子を見ていた。)

「目に、見えるのか?」

(春人は、目をしかめて。 不機嫌そうに、辺りを見ていた。)

「え?」

「その、“闇”ってやつは。」

(賑やかな通りを見つめながら、チイは。 春人の隣に立ち。 静かに、思い出しながら、
頷いた。)

「ええ。」

「でも、わたしは。 こことは違う。 切り取られた別の場所の中でしか、

見た事がないわ。」

「この場所は、雨宮さんたちが守ってくれているから。」

「紫苑が言ってた。 いつも、雨宮さんが、闇を連れて行ってくれるんだって。」

「紫苑が心配・・。 わたしは、応援してるわ。」

「だけど、雨宮さんは・・。 わたしたちとは、違う場所に。 いつもいるの。」

(チイは優しげに僅かに微笑みながら。 夏樹の隣で、嬉しそうに笑う紫苑を、
見つめた。)

***

「気配が強うて、敵わぬ・・。」

「こういう祭りのときには、夜に紛れて、魑魅魍魎も動き出すものよのぅ。」



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