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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter93 『覚悟』 93-2


「自らの“終焉”を望んでも・・。」

「愛する者の“終焉”を、望むことは出来ない。」

「どれほど強い人でも・・。」

「私の力を、破れる人はいないわ。」

(黒い海のうねりの前で、月明かりの下。 葵の瞳が小さく光った。 異空間に
映し出された、夜の海は黒く暗く。 長い髪が、強い風で、葵の顔を隠していた。)

「たとえ、あなたでも。」

【・・、その声・・。】

「・・、私が影で隠すのは、大切なものたち・・。」

「私が生きている限り。 そのものは隠される・・。」

「あなたが思うより。 心は力になるの。」

【・・、似ている・・。】

「私に大切なものをあずけた人たち・・。 守ってほしいという願いが。」

「私を。 あらゆる力から守るのよ。」

(葵はそう言いながら、穏やかに微笑み。 静かに、闇夜の中で。
胸に手をあてた。)

(月明かりが、雲間から覗き。 温かに微笑み見上げた美しいその表情を、
フェルゼンの前に、ありありと映し出した。)

「・・・っ、リザ・・!」

(フェルゼンは、いつの間にか、小さな仮の姿に戻っていた。)



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