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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter93 『覚悟』 93-29


「・・ええ。 助かるべき命が。 もっとあったの。」

『助かるべき命は、特別なものだけだ。』

『選ばれたもの、権力や金を持つものだけ。』

『貧しいもの、弱いものが救われることはない・・。』

『そして、そのために。 粒樹や夏樹が死のうとも。 彼らは人ならぬものとして、

誰も、気にも留めないのだろうか?』

『夏樹にもしものことがあった時・・、機密の中で葬られるこの世界で。』

『誰が、涙してくれる・・?』

「彼女が居てさえくれれば・・。」

(石垣は、目の前に実現が迫った悲願に。 焦がれんばかりに、両手を合わせた。)

「“時の欠片”は、まだ実用化できない。 彼女の持つ、命を与える力が。

一欠片ごとに入っていると分かったわ。 けれど、奥に眠る、“闇の痕跡”を

除去できなければ、人体に与えて、安全とは言えない。」

「あとは、これさえクリアできれば・・。」

「そうねまさに。 “時の欠片”は一粒一粒が、彼女の一部。」

(静かに言った彩の胸元に、銀の十字架のアクセサリーが、光っていた。)

「聖、あなたの考える通りよ。」

「命を与える・・、“時の欠片”と、私たちがそう呼ぶようにね。」



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