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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter93 『覚悟』 93-34


「いずれにしても、今。 これ以上、夏樹くんの闇化を促すのは、得策ではないわ。」

「今、眠ってもらっている閉鎖室では。 彼の力を隔離しきれない。」

「けれど、準備が整い次第。 彼の力と、彼の心臓に眠る“核”とを切り離す、

措置を取るわ。」

「あなたも“核”がほしいはず。 誰よりも“欠片”に執着しているのを、

知っているのよ。」

「そのために、私が彼を・・。 壊したとしても、あなたに責める権利はない。」

「それがわかったら、ここにサインを。」

(彩は聖の目の前に、一枚の書類を差し出した。 そこには、すでに、
首相のサインが、記されていた。)

「くっくっ。 どうした、彩?」

「君の手が、震えているようだが。」

(金色の瞳が、にやりと笑い。 書類を差し出した彩の、微かに震えた指先が。
ぴくりと止まり。 それを隠すかのように、彩はその手を自身で握りしめた。)

「今さら、許可でもないだろうが? とっくに、人の道に反する、

我々だ。」

「失敗を恐れるな、彩。」

「不幸にも君が能力者を一人、葬ったところで。 誰が君を責める?」

「“核”は“時の欠片”の中心。 “闇”と“命”を生み出す、粒樹の心臓。」



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