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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter93 『覚悟』 93-46


(その場にいる誰よりも、強い力を発し。 穏やかに微笑む、
丸眼鏡の奥の、小さな灰色の瞳が。 えも言われぬ冷たさを秘め。
菖蒲を見つめ返した。)

「お爺様。」

「そうですよ。 聖様に会わせてください。」

(橘は、ため息をつき。 菖蒲を見た。)

「橘と、お呼びなさい。 菖蒲さん・・。」

「私は、聖様の専属執事。 私に、歯向かうのですか?」

(菖蒲は、願いを込めて橘を見たが。 それは、届かないように思われた。)

「国に事を構えて。 あなたに何の勝ち目がありますか。」

「あなたに分が悪いことは、わかっているでしょう。」

「そうでしょうか? 私には、そうは思えません。」

「夏樹様の、願いを叶えるのが。 私の仕事です。」

***

「君は、実行する前に、もう保証できないと言う。」

「だが果たしてそうか? 僕はそうは思わない。」

「それにね、夏樹は。 君が思うほど、やわじゃない。」

「僕が、育てたんだよ?」

「これでも、自慢でね。」



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