HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter93 『覚悟』 93-47


「議論していると、君たちは忘れているようだから言っておこう。」

「誰が憎んでいようとも。

僕が彼を愛しているんだ。」

「さぁ。 生半可な気持ちで、取り組んでくれるな。」

「僕は、君の研究が成功することを祈ろうか。」

(輝く瞳が、満面の笑みを浮かべ。 聖はペンを取ると、
何のためらいもなく。 力強く、素早くサインした。)

「彩。 道を決めたなら。

途中で引き返すべきじゃない。」

「どうあっても、進むべきだ。」

「そうだな万が一にも・・誰かが・・。 止めてくれるまでは。」

***

ガチャッ・・ギギーッ

(聖は、言葉と同時に開いた。 重い黒塗りの扉を、驚き見つめた。)

『・・菖蒲・・。』

(扉の向こうには、黒い燕尾服に身を包む、菖蒲が立っていた。)

(いつも整う、長く結われた細い後ろ髪は。 黒服の執事達にもまれ、
やや乱れた様子だったが。 白手袋をはめて立つ様子は、どこか。
いつもと違う、張り詰めた空気を持ち。 鋭く、迷い無く向けられた黒い瞳が。
四角い黒縁眼鏡の奥で、聖を睨んだ。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ