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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter93 『覚悟』 93-5


「葵よ。」

(葵の答えに、少年の口元が。 にやりと笑い。
身体を起こすと。 尊大な態度で、鋭い視線を送った。)

「あの赤毛の男は、命拾いをしましたね。」

「僕の手を逃れるなんて・・、あなたの力は素晴らしい・・。」

「僕は、善・・。」

「葵、また会いましょう。」

(そう言うと、少年は、葵の前から姿を消した。)

ザザーンッ・・ ザザーンッ・・

(波音に耳を傾けたあと、葵は。 ワンピースの裾をつまみながら、
砂浜の上に似つかわしくない、美しい靴の爪先で。 さらさらとなだらかな砂の上を歩き、
すぐそばにある。 異空間通路への扉をくぐった。)

ゴワッ・・コォォォーッ

シュンッ

(葵は、夜露にぬれる、裏の細道から。 白亜の洋館へ、小さな裏手の扉を開いた。)

キイッ

「・・葵。 こんな夜中にどこへ行っていたの。 緊急の、警戒態勢が敷かれたのに。」

「光。」

(葵は、靴の砂を払い。 小さなアンティークランプの灯る洋館内へ、
足を踏み入れた。)



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