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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter93 『覚悟』 93-9


(薄紫の瞳は、瞬き。 ゆっくりと、文字を読んだ。)

***

キイッ カタンッ・・

(人通りもなくなった、真夜中の桜ヶ丘の上。 snow dropの白いアーチをくぐり。
スーツ姿の誠司が、桜を安心させようと、笑顔を向けた。)

「様子がわかったら、連絡します。 それまでは、

出来るだけ、家を出ないように。」

「ええ。 あなた、気をつけて。」

(桜は誠司に鞄を手渡しながら、心配そうな顔で、玄関の階段を下りた。)

「紫苑さんは?」

「もう、眠ったわ。 よほど、ショックだったんでしょう。

あんなに、夏祭りを楽しみにしていたのに・・。」

(桜は遠い場所にいることがもどかしく、夏樹のことが
心配でならなかった。)

「大丈夫ですよ。 夏樹君に何かあったとは限りません。」

「明日の朝には、ひょっこり戻ってくるかもしれませんからね。」

(誠司は微笑み、オレンジ色の外灯の下をくぐり。 車へ向かうと、
静けさの中。 星空の下の斜面を、車で走り出した。)

***



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