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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter94 『薄雲』 94-11


(辺りは、夜の海で。 暗い波音だけが、響いていた。)

「うっ、うっ・・。 ひっく・・。 うっ・・。」

「お母さん・・。」

(それは、時折見る、夢の断片のようで。
幼い夏樹は、泣いていた。
浜辺を歩いていた足元は、いつの間にか。
白い雪の上へ、導かれていた。)

ヒューッ・・

サクッ・・サクッ・・

「はぁ・・っ。」

(凍りつく冷たい風が、小さな夏樹の体温を奪い、
半ズボンに薄いパーカーの上着の小さな手足に
雪が降り積もっていた。)

ザァァァァーッ

(泡雪が舞い上がり。
涙を浮かべた、大きな。 深い紺色の瞳が見開くその先に、
一人の少女が、姿を現した。)

ザザザァァァーッ

(雪の粒が少女の顔を隠していたが、ふわりと舞いあがる深い紺色の
短いソバージュの髪。 淡いグラデーションに色づく、ピンクのレースが揺れ。
目の前に現れた、鮮やかなまるで花開く様な少女の姿に。 幼い夏樹の顔が、
ぱっと明るくなった。)

***



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