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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter94 『薄雲』 94-19


スカートを揺らし。 紫苑は目線を下へ。
リビングの明るい光に照らされているものの。 仄暗い、緑茂るやわらかな芝生の上に、
視線を落とした。)

「ニャァ」

(そこには、小さな黒猫がいた。 黒猫は、静かに紫苑に近づき。
黄色の瞳を揺らした。)

「・・。 クロ、ここに居たの?」

「中へ入る?」

(ちょこんと座っている猫に、紫苑も腰を落とし、そっと顔を近づけた。)

「・・ニャァ」

サワサワサワッ・・

(夜風がそよぎ、紫苑の髪を、後ろから吹き上げた。)

「・・。 《何か、手がかりを・・。 見つけたんですって。》」

「・・はっ。」

(紫苑は、自分の言葉にはっとした。 ふいに口をついて出たその言葉は、
自分が意図して言ったのだろうか?)

『・・・っ。』

(何か、恐ろしいものを感じて、
紫苑の身体は強張った。 瞬く視線の先で、小さな黒い子猫の。
黄色の瞳が、煌めいていた。)

「・・・。 クロ・・。」



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