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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter94 『薄雲』 94-5


「千波ちゃんのことが気になるのもわかるけど。」

「無事なことはわかってる。」

「静乃先生から、菖蒲のところに連絡が行って・・。」

(その言葉を聞いて、夏樹は。 キッチンの奥へ視線を移した。)

「菖蒲。」

(リビングに入って来たとたん。 ソラが夏樹をがっちりつかんでしまったので。
菖蒲は、声をかけるタイミングを失い。 キッチンの奥に立ったまま。
何を言おうとしたのか、言葉がでないまま。 少し離れた位置から、
眩しそうに夏樹を見ていた。)

「おはよう。」

(様々に、言いかけた言葉は。 菖蒲の中で消え。
穏やかに微笑み返すと。 ただ、小さくうなずき、嬉しそうに
ひとこと声をかけた。)

「・・、おはようございます。 夏樹様。」

(夏樹は静かにうなずいた。 菖蒲は、出過ぎたことをしたのではないかと
思っていた。
街へ帰りたかったことはわかっていたが。 国や、聖の意に背いて、
自分が取った行動は、はたして。 夏樹のためだったのだろうか?)

(研究所に居なければ、夏樹は、彩の治療を受けることは
できない。 夏樹の家である、屋敷や。 FOTのメンバーのいる本部へ。
帰路を絶ってしまったのではないか。)

(だが、次の言葉で。 菖蒲の心配は、打ち消された。)

「聖に、会おうと思う。」



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