HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter94 『薄雲』 94-8


「夏樹様。

お茶をお入れいたしましょう。」

(菖蒲は、にこやかに、そんなソラを見送りながら。
ティーポットを片手に、夏樹の側に来た。)

「ありがとう。 菖蒲、けっこう無茶したんじゃないか?」

「帰って来れるって、思ってなかった。」

コポコポッ・・

(カップに注がれる琥珀色の紅茶と、香りにぼんやりと意識を向けながら。
夏樹は静かに、目を伏せた。)

「ほんとうだ、思ったよりこたえてるな。」

「気持ちはすっきりしてるんだけど。 座ったら、

立ち上がれなくなりそうだ。」

(そう言って両腕を抱える夏樹は、微笑んでいた。)

「・・夏樹様・・。」

「千波ちゃんの顔が見たい。 FOTの回線のコンタクトが切れるくらいだから、

だいたい何があったのかは想像がつく。」

「大丈夫かな。 いつも聖からもだめだと言うんだけど。

千波ちゃんが僕の意識と繋がっていることが多いんだ。」

「痛みを共有していないといい・・。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ