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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter95 『強く』 95-11


カリッ カリリッ

(紫苑は名残惜しむように、白いキャンバスに描かれた、髪先に、
一筆加えた。)

「・・良く。 描けてる・・なぁ・・?」

『・・!・・』

(突然、耳元で聞こえた声に。 紫苑は硬直した。)

「・・やめて・・。」

(えんぴつを持つ、紫苑の手は。 震え、視線も。
身体も。 動かすことが出来ない。)

「へぇ・・。 この髪。」

「この・・、目。」

「・・奴にそっくりだ・・。」

「・・この前の、・・僕の警告・・。 わからなかった?」

「・・。 まぁ・・、良いよ。」

「これからも・・。 僕に。」

(小さな少年は、紫苑の背後にぴたりと身体を寄せ。
首筋に、息がかかる程の距離で。 震え、硬直する紫苑の、
ピンクに色づく頬に。 口をよせ、語りかけた。)

「その目を貸してよ。」

「上手く行ってるよね・・。 あいつは君に・・。 心を許してる。」



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