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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-19


(窓が、わずかに開き。 暗い室内に、月光が注いでいる。)

トッ カタンッ・・

(千波は、ためらいなく、聖の側により。 机の後ろに回ると、窓を下ろし閉めた。)

「あ・・っ。」

(窓を閉めながら、千波は。 聖の背中に振り返った。)

「・・すぅ・・。 ・・すぅ・・。」

(静かに、寝息を立てる。 聖のうつむいた頬の上に。 その肩と、机上に。
覆う様に、輝き流れる銀髪に隠れて。 聖の顔は、わずかにしか
後ろに立つ千波には見えない。 銀の指輪が光る左手は、傾く頬にそえられ。)

(呼吸とともに、わずかに動いていたが。 千波は、もう片方の金の装飾が煌めく右手が。
普段、けして開かれることのない。 アンティークデスクの、一つ。
鍵引き出しの中に。 その中にある、何かに。 わずかな指先で、触れたまま。
眠っているのだと気づいた。)

「・・開いてる。」

「指先に、あるのは、何かしら?」

(聖の手には。 その机の鍵を開く、金の鍵のついたアクセサリーが煌めき。
その指先には、月明かりに光る。 小さな、フレームがあった。)

「・・フォトフレーム・・?」

(千波の胸は、ドキドキと高鳴った。 見てはいけないという思いが込み上げながら。
その場から、去ることも。 視線を逸らすこともできずに。)

(そっと、流れる銀髪が、揺れる間に。 息をのみながら、その指先の
触れる1枚の写真を。 眠る聖の背後から。 わずかに覗き込んだ。)



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