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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-20


「・・っ。 写真・・。」

『・・誰・・?』

トクンッ トクンッ

(高鳴る千波の胸は、不安を予感した。
古びた、フレームの中。 曇るガラスの中に。 写るのは、
小さな、少女の笑顔だった。)

「紺色の髪・・。 夏樹に似てる・・。」

『・・・!』

(恐ろしさと後悔にかられた。 見てはいけなかったに違いない。
そこに、聖が鍵で閉ざしていた引き出しの中に。 夏樹と千波が、聖と出会った理由が
仕舞われている気がした。)

(それは、開けてはいけない封じられた過去の出来事だ。
そして、聖が写真にわずかに触れる指先に。 触れていたいと伸ばしたその手に、
にじみ出る想いは。)

(千波の心の奥にまで、流れ込み。 一瞬のうちに、千波の心を遠ざけた。)

(目を閉じ、静かに眠る。 聖の、後ろ姿を見つめながら。
今、夢の中にいるのは。 聖が、長年思い描いている人は。)

(その人しかいないと、示している様だった。)

「・・っ。」

(同時に、強い愛しさが込み上げ。 千波は、息をのみながら。
そっと、傍らにあった上着を、眠る聖の肩に。 後ろからかけた。)

「・・・。」



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