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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-21


『聖・・。』

(千波は、思わず。 後ろから、そっと、聖を抱きしめていた。)

『あなたをずっと。 とらえているのは、その人なのね。』

『あなたと初めて出会ったとき、あなたは。』

『今みたいな、表情をしてた。』

『あのときも、この人を探していたの?』

(千波は、聖の肩を抱く手に、わずかに力を込めた。)

サラサラッ・・

「・・ん・・。」

(肩にかけた上着の内側で、流れる銀髪が、乱れた。)

***

バキッ・・ パリパリパリパリッ

『「・・粒樹・・っ。」』

(聖は、夢の中で。 粒樹を探していた。 巨大な闇の中で、結晶化した粒樹は。
伸ばしたその小さな指先から。 可愛らしい裸足の爪先から、重なり合うドレス。
小さな唇。 祈るように閉じた睫毛の瞳から。 伝う涙の滴までも。)

(氷の様に煌めき結晶しながら、輝きを放ち。
夜空の上で。 聖の見上げる頭上で。 ためらいなく瞬時に、粉々に砕けた。)

『「ああああっ・・!」』



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