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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-22


***

「・・はっ。」

ガタタッ・・!

(目覚めた金色の瞳が見開き。 千波が触れていることもかまわず、勢い良く
立ち上がる。 座っていた椅子が、強い音をたて。 千波は、後方へよろめいた。
突然振り返った拍子に。 眩い銀髪が、目の前を流れるのを千波は見た。)

(強く鋭い金色の瞳が。 輝く銀髪の間で、恐ろしいほど輝き。)

(千波は、混乱したが。 何か言葉を発することができずに、
ただ、小さく。 身体をこわばらせた。)

『!』

ガッ・・ ガタガタッ・・ ガシャンッ・・!

(机上の小物が落下するのも気にせず。 聖は、千波を。
閉じられた窓のそばへ、押しやった。)

「はぁ・・、・・っ。」

「くっくっくっ。」

(身体ごと強い両腕が、窓際に、千波を抑えつけていた。)

(むせ返るバラの香りと。 体温を感じるほど、近づく聖に。
息をのむ。 これほど、聖に近づいたことはない。)

(千波は、聖の鼓動を、胸に感じたが。 強く、窓辺へ引き寄せられ。
抑える手から伝わる温もりが。 怖さよりも、悲しみに似ていた。)

『そんな顔で、笑わないで。』



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