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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-29


紫苑は、嬉しそうに瞬いた。)

「・・、夏樹くん。 明日、みんな来るね。」

シュボッ・・ パチパチパチッ

(夏樹は、かすかにはっとし。 うなずいた。)

「・・うん。」

(紫苑は、弾ける花火の向こうから。 夏樹を見た。)

「明日、晴れるといいね。」

「そうだね。」

(明るい茶色の瞳に、いくつもの、色彩が。 ぱらぱらと弾け、舞った。)

(その視線の先に立つ。 月光に照らされ、透き通る。 蒼白な頬は、
夏の熱を持つ、夜風の中で。 冷やりと冷たい空気を感じさせ。 目を細め、笑う。
深い紺色の瞳は。 さらさらと流れる髪の奥で。 穏やかに輝き。)

(安堵した紫苑は、その瞳の輝きから、視線を逸らし。 手の先の。
闇夜の中に、儚くこぼれて行く。 七色の火花を、じっと見つめた。)

「こうしていると、忘れるな。」

(夏樹は、ぽそっとつぶやき。 そんな自分に微笑むように。 そっと肩をすくめ、
窓に背をもたれ。 一息つき、夜空を見上げた。)

トッ トッ

「夏樹様。」

(ダイニングの方から、呼ぶ声に。 夏樹は振り返った。)



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