HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-3


(首相の言葉に、大臣たちは、唾を飲み込んだ。 確かに、美しい。
これまで、見たことのない。 巨大な、大きさの、煌めきを放つダイヤのごとき
輝きを。 喉から手が出るほど欲しいと。 願う欲望を抑えることは難しい。)

「この“欠片”は、“リュウジュ”がそうであったと同様に。」

「我々に、“命”を与え。 “不死”をもたらすものだ。」

(そう言い放つ、骨ばんだ両頬に。 カッと見開かれた、黒い瞳が。
白髪の下で揺れる様は、まるで死の淵から這い上がろうとする。 悪魔にも似て、
力強く聴衆に差し出された。 筋ばんだ手は、今まさに。 その胸の中から、
“心臓”を取り出すかのごとく、音をたて。 握られた。)

「はははははっ・・。」

「先代も成しえなかった、いや。 これまで、人類が成し得なかった偉業を前に、

こんなちっぽけな、能力者一人。 消えたところで、誰が意に介す。」

(憎しみを込め、首相は。 映し出された画像を、幾度も指さした。)

「野蛮な、凶悪な。 人を“闇”におとしいれる能力者だ・・っ。」

「善良な国民を生かすべき“欠片”が・・っ、なぜこいつの中にある・・っ!」

「我々人類からっ、最後の希望を奪うかのごとく。」

「“リュウジュ”の心臓は、この子供の心臓と一つに融合している・・っ!」

(恐る恐る、大臣の一人が聞いた。)

「・・闇化する、恐れは、あるのでしょうか?」

(だが、首相は即座に答えた。)

「無い。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ