HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-32


『・・菖蒲。』

『考えられるわけ、ないじゃないか。』

「ううん。」

(夏樹が、何かを愛しむように微笑みながら。 わずかに首を振ったのを見て。
菖蒲は何か言いかけた。)

「今で、十分だよ。 菖蒲。」

「僕は。 今で十分、幸せだ。」

(菖蒲は、夏樹に反論しなければならないと思った。 主人の考えを、
変えさせなければならない。)

(冗談では無く、本気でそう思ったのは、初めてだった。)

「夏樹様・・。」

『本当に。 聖様に似て、頑固なんですから・・。』

『一体、どう言えば。 分かって下さるのだろう。』

「ん?」

(菖蒲が、自分の気持ちと葛藤し。 何か、言おうとしているのだと感じ。
夏樹は笑って。 菖蒲の腕を押し、キッチンの手もとに意識を向かわせた。)

「いいから。 そんなこと、いいから。」

「早く、それ切って。 持って行ってあげなよ。」

「私は・・。」

(菖蒲は抵抗しようとしたが。 夏樹は、笑い。 菖蒲を押しやった。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ