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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-35


(夏樹は、笑った。)

「わかっているよ。 だけど、迷っていたら、聖に僕は勝てない。」

「僕が“鍵”を壊すことを恐れれば。 きっと、闇に負けてしまう。」

「巨大な闇の前では。 能力者の力なんて小さい。 僕は、何も望む余裕はない。」

「今目の前にいる人を。 守ってくれと、願うしか出来ないよ。」

(深い紺色の瞳が、静かに目を伏せ。 微笑んだ。)

「僕が“鍵”を守るよ。」

「時が来るまでは。 それが、たとえ聖であっても。」

「僕は、渡さない。」

(夏樹の瞳は、強い決意に満ちていた。)

『皆、自分の幸せばかり、願っているというのに。』

『・・どうして、この人は・・。』

『自分自身のために、戦ってくれないのだろう。』

「はぁ・・っ。」

『どうして、自分が生きるために、そうすると。』

『言ってくれないのだろう・・。』

(菖蒲は、思いあまって。 夏樹の手に触れた。)

「私は、心配なんですよ。」



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