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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-38


「だが橘。 夏っちゃんは、自分のために受け取らないよ。」

「まやかしの力で、生きようとはしない。」

(聖は言いながら、月夜の明かりにゆらめく窓辺を見上げ。 1歩、裏手の扉に向かい、
歩を進めた。)

「僕が欠片を集めることを、邪魔しているのだとしたら。」

「きっと。 誰かを守るためだ。」

「くっくっ。 一番、難しい人の中に。 粒樹は隠したね。」

「僕が。 彼から奪う事が出来るか。 彼が。 僕を、終わらせるのだろうか。」

「くっくっくっ。」

(思い描く、自身の結末に。 聖は、悲痛に笑った。)

「少し、出てくる。」

ガチャッ・・ キイッ バタンッ

(聖は振り返らず。 見送る橘の視線の先で。 眩い銀髪が、月光を受けて流れ。
ドアの向こうに消えた。)

「行ってらっしゃいませ・・。 聖様。」

***

(誠司は、隣の棟のリビングの中に。 夏樹を案内した。
高い背をかがめ、椅子を引き。 夏樹に笑顔を向けた。 仕事から帰り、リラックスした
様子で。 誠司は夏樹と向き合って、座った。)

「かけて。」



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