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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-39


「はい。」

(夏樹は少し緊張していた。 和やかな、紫苑の家庭は。 夏樹の憧れで。
家の中に漂う。 ほのかに、残る夕食の香りに混じり。 壁やテーブルの上に飾られた、
蒲公英の工作で作った小物や。 お絵かきの絵。 年月をかけて、積み重なる。
穏やかな日々の気配が。 夏樹の目指すべき道を、示していた。)

カチャッ コポポポッ・・

コトン

(桜がお茶を入れ、夏樹と誠司に差し出した。)

「どうぞ。」

「・・ありがとうございます。」

(夏樹はわずかに会釈し。 伏し目がちな瞳で、瞬き誠司を見た。)

「夏樹君。 静乃先生から、僕らも話を聞いたんだ。」

「夏祭りの後の事が、とても心配でね。」

「僕らは、君をお預かりしているのだから。 君の帰りを待っていたんだよ。」

(誠司の言葉に、夏樹はうなずき。 謝った。)

「ご心配をおかけして、すみませんでした。」

(そんな夏樹に、誠司は微笑んだ。)

「ははっ。 夏樹君。 僕達は、家族も同然なんだから。 当たり前のことで、

君が謝ることじゃない。」



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