HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-41


***

ピコンッ ピコンッ・・

(消灯した病院内の廊下には、医療機器の音が、静かに響いていた。)

(黒服の男たちに囲まれた。 白髪の混じる一人の男が。 靴音を響かせ、静けさを
破った。)

カッカッ

(暗い院内は、不思議な緊張感と、重い空気に包まれ。 昼には、けして訪れない、
その人物の姿を。 見る者は、他に誰もいなかった。)

「ここで待て。」

「直に戻る。」

「はい。」

(黒服の男の中の一人が、答え。 主を見送った。)

ガチャッ ガララ・・ パタンッ

(氷のように冷たい。 硬く、こけた頬が。 一つの病室内に入り、扉を閉めた
途端に。 その表情を崩した。)

「青葉・・。」

ピコンッ ピコンッ・・

(医療機器の音が響き。 白い壁に囲まれたその場所は。 冷たく感じられ。
機器から伸びた、いくつものコードが。 まるでその場所に。 白い布団の中に、
眠る小さな少女を。 捕えている様で。 石垣の胸は詰まった。)

「・・もう少しだ。 青葉。」



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